MODDIY、12VHPWRと12V-2x6ケーブルは異なるとアナウンス。一方で、Corsairは「同じ」と。どちらが正しいのか。そしてGeForce RTX 5090の焼損・融解の原因はどこにあるのか
MODDIYが12VHPWRケーブルと12V-2x6ケーブルは『異なる』とのアナウンスを行いました。
事の発端
2025年2月9日に、RedditでGeForce RTX 5090の12V-2x6コネクタおよび電源側コネクタ、そして接続に使用したMODDIYというサードパーティメーカー製の16ピンケーブル(12VHPWR / 12V-2x6ケーブル)が焼損・融解したとの報告が出てきました。
Redditではこのサードパーティ製の16ピンケーブルが原因ではないかと疑う声が出ていました。
焼損・融解したGeForce RTX 5090 FEのコネクタと
サードパーティ製16ピンケーブル
MODDIYのアナウンス
この報告が出た翌日となる2025年2月10日、件の16ピンケーブルを製造・販売しているMODDIYは、同社Webサイト上にて以下のアナウンスを行いました。
Q.) A.) 当社から2025年以降にご購入された12VHPWR / 12V-2x6ケーブルは、すべて、新しい12V-2x6仕様および基準に基づいて製造されており、GeForce RTX 5000シリーズGPUとの互換性と最適なパフォーマンスを保証いたします。 2024年以前はまだGeForce RTX 5000シリーズGPUが登場しておらず、当時の主流は12VHPWRでした。この時期に製造されたすべてのケーブルは、GeForce RTX 4000シリーズGPU向けに設計され、テストされていました。 新しい規格によって強化された安全性と、パフォーマンスを最大限に得るために、すべてのユーザーは新しい12V-2x6ケーブルへのアップグレードをおすすめします。 Q.) A.) ― MODDIY |
つまるところ、MODDIYは、12VHPWRケーブルと12V-2x6ケーブルは『異なる』とし、同社が製造・販売した2024年以前のものは12VHPWRケーブル、2025年以降のものは12V-2x6ケーブルだと述べています。
(備考: 件の焼損・融解した16ピンケーブルは2024年以前のもの)
矛盾点と疑問点
矛盾点
上記MODDIYのアナウンスには矛盾点や疑問点があります。まず、16ピンケーブルこと12VHPWRケーブルおよび12V-2x6ケーブルについてですが、これらのケーブルにはどちらも違いがなく、12V-2x6規格へと変更されたのはグラボ側および電源側のメスコネクタだけだと、電源メーカーであるCorsairが以前から明言(1 / 2)しています。つまり、ケーブル側のオスコネクタに変更はなく、12VHPWRケーブル = 12V-2x6ケーブルであり、呼び方が違うだけでどちらも同じだとされています。
12VHPWRケーブル = 12V-2x6ケーブル、違いなし
MODDIYとCorsairとで言っていることが異なっており、矛盾が生じています。どちらが正しいのかは判断しかねます。
疑問点
そもそもの話として、16ピンケーブルは600Wの消費電力に耐えられる『仕様』です。GeForce RTX 5090の575Wにも耐えられる『仕様』です。
にもかかわらず、MODDIYは「GeForce RTX 5000シリーズ向けの最新の12V-2x6ケーブルへとアップグレードしてください」と述べています。さらに、「2024年以前はまだGeForce RTX 5000シリーズGPUが登場しておらず、当時の主流は12VHPWRでした。この時期に製造されたすべてのケーブルは、GeForce RTX 4000シリーズGPU向けに設計され、テストされていました」と述べていることから、2024年以前に製造された16ピンケーブルは、GeForce RTX 4090の450Wには耐えられるものの、GeForce RTX 5090の575Wには耐えられない『低品質』なものではないか、という疑念が生じます。
MODDIYのアナウンスは、本来であれば600Wに耐えられる『仕様』で作らなければいけないところ、2024年以前はそれに耐えられない『低品質』なものを作っていた、と疑われても仕方のないアナウンスに見えます。
結局のところ何が焼損・融解の原因なのか
では、MODDIYのケーブルのせいでGeForce RTX 5090の12V-2x6コネクタが焼損・融解したのかと問われるとそうとも言いきれません。
先日、YouTuberのder8auer氏が自環境のGeForce RTX 5090 Founders Editionで検証したところ、16ピンケーブルの一部のワイヤーだけに負荷が集中しており、たった5分の高負荷テスト(Furmark使用)でGPU側のコネクタ温度は80℃以上に、電源側のコネクタ温度は150℃以上にも達することが判明しました。
電源側のコネクタは150℃以上に
電源はCorsair AX1600iを使用
der8auer氏は、わずか5分でここまでの温度に達したことから、「この検証を1時間続けるとどうなるだろうか。おそらくは何かしらの問題が発生するだろう。私はこれらのシステムを壊したくないため、検証はここで終了した」と述べ、検証を終えました。
また、der8auer氏は、上記のように「一部のワイヤーだけに負荷が集中していたために、焼損・融解が発生したのではないかと思われる」とも述べています。
なお、すべての環境で上記のような負荷の偏りが起こるわけではありません。米国のPCメーカーFalcon Northwestがテストを行ったところ、上記のような負荷の偏りは見られなかったと述べています。どういう条件で一部のワイヤーに負荷が偏るのか、詳細は判明していません。
現時点ではさまざまな疑問や疑念はあるものの、何が原因でGeForce RTX 5090の12V-2x6コネクタの焼損・融解に繋がったのか、はっきりとしたことはわかっていません。また、今のところ報告事例も少ないため、不運な初期不良という可能性も無きにしも非ずです。
ただ、これまでの報告で、これからGeForce RTX 5090でPCを組む際に、参考なること・気をつけたいことがいくつか見えてきました。
▼GeForce RTX 5090を使用する上で気をつけたいこと
- サードパーティ製の16ピンケーブルは使用しない。グラボ付属の変換ケーブルや、電源付属の純正ケーブルを使用する。サードパーティ製16ピンケーブルや変換コネクタを使用すると保証が無効になる恐れがあります
- もし、古い電源を使用しているなら問題が発生する可能性があるため、12V-2x6コネクタを備えたATX 3.1規格の電源を使用するのが望ましいです。これについては記事『GeForce RTX 5090、電力スパイクで最大901Wに達する。しかし、ATX 3.1電源は問題なし。その他の電源は……』をご覧ください
- 基本的なことですが、16ピンケーブルをきちんと奥まで挿し込む
- 新品でない電源や電源付属16ピンケーブルを使用する場合、電源側のコネクタや16ピンケーブルに磨耗がないかを確認する。コネクタの磨耗により、接触不良が発生して、電源側コネクタが焼損・融解したとの報告が出ています。もし、ケーブルの抜き差しを頻繁に行うような使い方をしている人(例えばレビュアーなど)はご注意ください
- サーモグラフィカメラをお持ちの方は、万が一に備えて高負荷時のコネクタやケーブルの温度を見ておく。やばそうな温度なら写真に撮って購入店やメーカーサポートに相談する