Arrow Lakeは曲がりにくい?LGA1851、RL-ILMを採用。CPUが曲がりにくくなった新しいILM。その効果は
ソケットLGA1851 / Intel Z890マザーボードでRL-ILM採用された模様です。
RL-ILM、覚えているでしょうか。2024年7月上旬頃に話題になった新しいILMです。復習もかねて、この新しいILMが登場するまでの経緯を説明いたします。
多くのPCファン・LGA1700 CPUユーザーの方はご存知かと思いますが、LGA1700ソケットを使用するIntel第12~14世代は、CPUが物理的に曲がります。CPUのIHSが『ᴗ』このようにUの字になります。(文字表現のため少々大げさに見えるのはご容赦ください) CPUが曲がる理由は、LGA1700ソケットのILM (Independent Loading Mechanism / CPUソケット固定カバー・固定機構の総称)の中央の圧力が強すぎるためです。
この問題への対策として、Core Ultra 200SシリーズデスクトップCPU (Arrow Lake)用マザーボードソケットとなるLGA1851では、RL-ILM (Reduced Load ILM / 低負荷ILM)と呼ばれる新しいILMを採用しています。デフォルトのILMは、ILMの中央でCPUをソケットに押さえつけますが、RL-ILMはCPUクーラーのベースプレートでCPUをソケットに押さえつけるため、デフォルトのILMのように中央に過度な圧力がかからない仕組みとなっています。ただし、RL-ILMでは、CPUとソケットピンをきちんと接触させるために、CPUに対して最低35ポンド(約16kg)の圧力をかける必要があります。
Noctuaによると、ほとんどのハイエンドLGA1851マザーボードは、このRL-ILMを採用しているとされています。実際、ASRockのハイエンドマザーボードZ890 TaichiのマニュアルにもRL-ILMを採用している旨と、その取り扱い方法が記されています。
ASRock Z890 Taichi ― RL-ILMについて
Intelは第12世代のときに「少々曲がってもCPUが仕様外の動作をしたり、適切な動作条件下で公表しているクロックを満たせなくなるといったはない」との公式見解を示しました。
しかしながら、CPUが曲がると、CPUクーラーのベースプレートとIHSとの間に隙間が生じるため、CPU温度の上昇に繋がります。仕様外の動作(仕様クロックに達しないなど)をすることはないにしても、温度が上昇したり、その結果オーバークロック時のクロックが伸びにくくなったり、ましてやCPUが物理的に曲がるなんてことは気持ちの良いものではありません。
過去にも見たことがある人は多いとは思いますが、今一度、曲がってしまったCPUの写真をご覧ください。
こういった事態を避けるために、今回、LGA1851では新たにRL-ILMが採用されています。Core Ultra 200Sシリーズの国内価格は、Core Ultra 9 285Kが税込115,800円、Core Ultra 7 265Kが税込78,800円、Core Ultra 5 245Kが税込59,800円と、どれも安くありません。このような事態になることは多くの人が避けたいと思うところでしょう。
ただ、すべてのマザーボードでRL-ILMが採用されているわけではありません。RL-ILMを採用しているかどうかはマザーボードによって異なります。購入を考えているマザーボードがRL-ILMを採用しているかどうかは、マザーボードのWebページやマニュアルを見るか、マザーボードメーカーへとお問い合わせください。
なお、留意点として、RL-ILMがどこまで効果があるかはまだ未知数です。理論上は曲がりにくくなっていることは間違いありませんが、それでも中央にわずかな圧力がかかることもたしかです。そのわずかな圧力がどう影響してくるかはまだわかりません。
Intel Core Ultra 200SシリーズデスクトップCPUとLGA1851マザーボードは、2024年10月24日(日本では10月25日)に発売されたばかりです。RL-ILMの効果の有無は、今後、時間が経てば明らかになってくるでしょう。
中央への圧力を完全になくしたいという人は、LGA1851用の反り防止フレームが発売されたらそちらの購入をご検討ください。