Intelに疑念。第13~14世代CPUの不具合はモバイルCPUにも影響する?しない?ノートPCに0x12Bマイクロコードがリリース

CPU

Intel Mobile Core Provessor

Intel第13世代および第14世代CPUが不安定になる不具合は、特定のデスクトップCPUだけに限られているとされています。しかし、モバイル・ノートPC向けのCPUもこの影響を受けるのではないかと疑われています。

はじめに

Intel第13~14世代CPUは、なんの対策も行わないままを使用していると、CPUが劣化して動作が不安定になります。この不具合を抱えているCPUは以下のデスクトップCPUだけとされています。

  • 不安定になる影響を受ける製品
    • Core i9-13900K / KF / KS / F / Kなし(無印)
    • Core i7-13700K / KF / F / Kなし(無印)
    • Core i7-13790
    • Core i5-13600K / KF
    • Core i9-14900K / KF / KS / F / Kなし(無印)
    • Core i7-14700K / KF / F / Kなし(無印)
    • Core i7-14790
    • Core i5-14600K / KF

その他のCPUや、モバイル・ノートPC向けCPUは影響を受けないとIntelは述べています。

Intel第13~14世代CPUの劣化を未然に防ぐには、BIOSアップデートが必要になります。BIOSアップデートはあくまでも劣化を防ぐものであり、すでに劣化したものを直すことはできません。すでに劣化してしまったCPUは返品・交換するしかありません。

今まで、Intelは、この不具合に対処するために以下のマイクロコードを発行してきました。

  • eTVBマイクロコードアルゴリズムにより高温状態でも高パフォーマンスで動作してしまう
    • マイクロコード0x125 (2024年6月リリース済み)にて修正
  • SVIDアルゴリズムが高電圧を要求
    •  マイクロコード0x129 (2024年8月リリース済み)にて修正
  • アイドル時や軽い負荷時にVmin Shiftの原因となる高電圧を要求
    • マイクロコード0x12B (0x125および0x129を内包)にて修正

これらのマイクロコードを含んだBIOSアップデートを行うことで、CPUの劣化を防げるとされています。現時点では0x12Bが最終修正マイクロコードです。

ノートPC向けRaptor Lake-HX (Refresh) CPUも不具合の影響を受けるのではないかと疑われる

ASUSから2024年11月13日付けで第14世代モバイルCPUを搭載した同社製ノートPC向けに『重要度:クリティカル』とされるBIOSアップデート(Version 320)が公開されました。

ASUSノートPC ROG Strix G16 G614JIR (Core i9-14900HX搭載) v320 BIOS
ASUSノートPC ROG Strix G16 G614JIR
Core i9-14900HX搭載 v320 BIOS

上記は、Core i9-14900HXを搭載したノートPC『ROG Strix G16 G614JIR』用のBIOSです。重要度がクリティカルでありながら、そのBIOSの説明は「システムパフォーマンスの最適化」とだけしか記されておらず、それ以上の詳細は不明です。わかることは、BIOSアップデートをしないと、システムのパフォーマンスにクリティカルな影響があるということだけです。

このBIOSを適用したユーザーMaxusLDragold氏によると、BIOSには0x12Bのマイクロコードが含まれていました。

Core i9-14900HX環境に0x12Bマイクロコードが
Core i9-14900HX環境に0x12Bマイクロコードが

0x12Bマイクロコードは、上記で説明したとおり、CPUの劣化を防ぐ現時点での最終修正マイクロコードです。CPUが劣化するのはデスクトップCPUだけのはずなのに、なぜか『重要度:クリティカル / システムパフォーマンスの最適化』として0x12Bマイクロコードを含んだBIOSがノートPC向けに公開されています。

一部の海外フォーラムでは、モバイルCPUでも不具合の影響を受けるのではないかと疑われています。過去には、ゲームデベロッパーのAlderon Games (1 / 2)が、第13世代のCore i9-13900HXなどを搭載したノートPCでも不安定になる不具合が発生していると言及していました。また、YouTubeチャンネルのGamers Nexusも、「第13~14世代ノートPCユーザーから不安定になるとの報告を多数受けており、Intelの発表と矛盾している」と述べています。しかし、Intelの公式回答は「特定のデスクトップCPUのみで劣化・不安定になる不具合が発生する」です。

では、なぜ、ASUSから『重要度:クリティカル / システムパフォーマンスの最適化』としてノートPC向けに0x12Bマイクロコードを含んだBIOSが公開されたのでしょうか。そこにはいったいどういう意図があるのでしょうか。

物事をすごくポジティブに推測するなら、劣化の不具合とは関係のない何か別の不具合があって、今回、それを修正するためにマイクロコードも(理由は不明ですが)最新のものにする必要があった、という可能性がもしかしたら無きにしも非ずです。ネガティブに推測するなら……それは最悪の事態です。

何にしても、『重要度:クリティカル / システムパフォーマンスの最適化』だけではわからないため、BIOSに関するより詳細な情報公開が望まれます。また、0x12Bマイクロコードが含まれている理由についても明確にしてほしいところです。