Ryzen 7000X3Dシリーズ破損問題・原因まとめ。各メーカーから対策BIOS公開
各マザーボードメーカーからRyzen 7000X3Dシリーズが焦げて破損する問題の対策BIOSが公開されました。以下、この破損問題のまとめと、対策BIOSの紹介です。
破損に至る原因まとめ
主にRyzen 7 7800X3DやRyzen 9 7950X3DといったRyzen 7000X3Dシリーズが破損に至る原因としては、過電圧に起因しているとされています。その死に至る過電圧も以下の2種類があります
- CPU電圧を盛りすぎると破損に至る
- SoC電圧を盛りすぎると破損に至る
前者に関しては意図的に手動で設定を変更しなければ過電圧になることはありませんが、問題は後者。このSoC電圧はEXPOメモリを使用(有効に)すると勝手に盛られます。どれくらい盛られるかはマザーボードメーカーごとによって異なりますが、1.3Vを超えてくると破損リスクが高まります。
焦げ付いて破損したRyzen 7 7800X3Dとマザボードソケット
そのため、各マザーボードメーカーの対策としては、主に以下の2つがあります。
- 手動でCPU電圧およびSoC電圧の設定が変えられるようになっていた場合は変えられないように変更
- EXPOメモリ使用時にSoC電圧が1.3Vを超えて自動で盛る仕様になっていた場合は1.3V以下になるように変更
「CPUを定格で使用していたにも関わらず破損した」という現象の主な原因は、EXPOメモリを使用したことでSoC電圧が過剰に盛られていたことに起因していると見られています。
ここで問題となってくるのがどこに責任があるのか。SoC電圧がどれくらい盛られるかは各マザーボードメーカーごとに異なります。1.3Vを超えて盛るメーカーもあれば1.3V以下になるようにしているメーカーもあります。なぜメーカーごとに違うのでしょうか。AMDが厳密に上限値を設けなかったのでしょうか、それとも上限値は設けられていたもののマザーボードメーカーが無視していたのでしょうか、あるいはAMDが上限値を1.3Vより高い値に設定していたのでしょうか。この辺、明確にされていません。
「オーバークロックは保証外の自己責任」とは言われますが、QVLに載っているOCメモリを使用して壊れて「はい自己責任」というのはあまりにもあまりでしょう。被害に遭った方に対して、各メーカー、真摯な対応が望まれます。
各メーカーの対策BIOS
- ASUS [マザーボードページ]
ASUSのマザーボードはEXPOメモリを使用するとSoC電圧が1.3Vを超えて盛られます。そのため、2023年4月25日付けで最大SoC電圧を1.3Vに制限したベータBIOSをリリースしました。「SoC voltage for Ryzen 7000X3D series limited to a maximum of 1.30V to protect the CPU and motherboard.」と記されたBIOSが対策BIOSとなります。また、現在ASUSのWebサイトで公開されているBIOSは、すべて、Ryzen 7000X3Dシリーズ使用時におけるCPU電圧の設定が変更できなくなっています。CPU電圧の設定ができた古いBIOSは削除されました。
- ASRock [マザーボードページ]
ASRockのマザーボードはEXPOメモリを使用してもSoC電圧は1.3Vを超えません。しかし、手動ではSoC電圧の設定を変更できるようになっているため、変えられないようにしたBIOSをリリースしました。「Optimize for Ryzen 7000X3D series processor.」と記されたBIOSが対策BIOSの模様です。
- Biostar [マザーボードページ]
Biostarの発表によると、CPU Vcore Voltage、CPU SOC Voltage、CPU MISC Voltageを制限し、過電圧を防止してRyzen 7000X3Dシリーズの破損リスクを低減したBIOSをリリースしたとのこと。2023年4月27日時点で公開されているのは『X670E VALKYRIE』『RACING B650EGTQ』『B650M-SILVER』の3製品。2023年4月13日付けの「Support AMD Ryzen™ 7000X3D series processors」と書かれたBIOSが対策BIOSとなります。
- Gigabyte [マザーボードページ]
Gigabyteの発表によると、より安全なSoC電圧設定の範囲を提供し、過電圧設定によるRyzen 7000X3DシリーズCPU破損のリスクを低減したベータBIOSをリリースしたとのこと。ただ、BIOSページを見ても最新BIOSが2023年3月付けのものしかなく、それがその対策BIOSなのかわかりません。「Performance optimized for Ryzen 7000X3D series processors」とは書かれていますが、この3月付けのものが対策BIOSなのでしょうか。あるいはプレスリリースだけ先行して、BIOSの公開はまだされていないのでしょうか。
- MSI [マザーボードページ]
MSIの発表によると、過電圧になることを防ぎ、Ryzen 7000X3Dシリーズの損傷リスクを減らすためにCPUの電圧を下げることができる負のオフセット電圧設定のみをサポートするBIOSをリリースしたとのこと。2023年4月14日付けの「Optimized for Ryzen 7000X3D series CPU.」と書かれたBIOSが対策BIOSとなります。
多くのメーカーに対して言いたいのは、この問題の対策を施したことを明確にBIOSページの説明欄に記してもらいたいです。「Optimized for Ryzen 7000X3D series CPU.」とか「Support AMD Ryzen™ 7000X3D series processors」とだけ書かれても、具体的なことが記されておらず、当サイトやプレスリリースを見ていないBIOSページだけを見たユーザーはどれが対策BIOSなのかわからずに戸惑うだけでしょう。